1998年5月号南紀の旅

撮影・取材 入江進

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さんま寿司 熊野弁当
さんま姿寿司
 寿司ねたとしてはあまりなじみのないさんまを使った寿司弁当。熊野地方のお正月には欠かせない料理の内の一品だ。さんまというと臭いが強いのではと思われるかもしれないが、心配御無用。後味さっぱりで、つい次の手が出てしまう。うまさの秘訣は何か。それは三陸や銚子沖を親潮にのって熊野灘にやってくるさんまは、潮にもまれて身は引き締まり、油も落ちて臭みのないさんまになると言うわけだ。そんなさんまを水揚げされたばかりの新鮮な内に腹開きをして、頭と骨を取り除き、塩を振りかけて一昼夜おく。その後水洗いして塩出しをし、酢に漬ける。そんな行程を経て最高の寿司種になるわけだ。
ふたを開けると、さんまが丸ごと使われている寿司が現れる。何とも尻尾までついているのには感動ものだ。酢飯との相性はとても良く是非味わってもらいたいお弁当だ。
熊野弁当
茶飯、椎茸を甘く煮染めたもの、海苔、そぼろ、目張り寿司2個、エビ、マグロの煮付け、豆、昆布巻、ゴボウにウニを詰めて揚げたもの、魚のすり身を油揚げで巻いたもの 中にはゴボウ・グリーンピース・人参 味付けはさわやか。
椎茸と茶飯の風味が素朴なうまさを出している。ゴボウにウニを詰めて揚げたものこれは風味良くとてもうまい。




めはり寿司 マグロステーキ

めはり寿し

野良仕事をするときの手軽なお弁当として作られてきた、熊野地方の代表的な郷土料理だ。酢を合わせたご飯にシソの葉のみじん切りと白ゴマを混ぜ合わせ、塩漬けの高菜でくるみ、俵型に整えたシンプルなお寿司。高菜の漬け物の塩加減と歯ごたえがとても良く、シソ風味のご飯との相性が実に素晴らしい。高菜の鮮やかな緑に目を見張り、おいしさにまた目を見張る、とてもうれしいお弁当。めはり寿司とさんま寿司を買ってみんなでつつき合うのがおすすめ。

鮪素停育(マグロステーキ)

厚焼き卵、ウインナーソーセージ、金時豆、たくわん、エビ、俵飯、めはり寿司が一つ、ふき、レンコン、そしてマグロのステーキ。これはマグロに片栗粉をまぶして揚げたあと、冷水で冷やしあくを取り、しょうゆと酒とみりんで味を付けたもの。ステーキと言うよりは竜田揚げと言った方がよいかもしれないが、味付けはそれほど濃くはなく、あく取りをしているためあっさりとしており、とてもジューシーだ。そして、このてりとそそられる香りがとても魅力的なお弁当だ。